甘い匂い

バスターミナルの公衆電話の先にベンチ。その手前で俺は乞食と戯れていた。俺はとても、当時の時代性を考えれば、相当臭っていた。乞食は俺と同じような−

比喩でも何でもない。

本当に俺と同じような−不思議な親和感があり、誰もがそれを認めていた。これは比喩だが、誰もの内蔵に、ある種の混沌と恍惚が眠っている。

そこの貴族もそこの土方もそこの公務員も−そして俺。俺の倒錯。いや俺の内蔵だ。人は内蔵から腐っていく。生まれてくる時から腐っていた、なんて言うつもりはない。

それぞれに何かがあり、何かを感じ、何かを決断する。それを重大に悩む俺達(俺と乞食)はまだ気がつかないでいる。俺達は明日を、明日をと悩んでいる。気がどうにかしていると錯覚する。錯覚を認知しようとする俺達。

まだ気がつかない。

哀れな俺達。なあ、手段はあるだろうか。俺達がバスターミナルから離れ、乞食は乞食のままで、俺はちゃんとして、そうできる手段はあるか?俺達の内蔵は生まれた時から腐っている。

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